今月から外科手術に使用する機材を新たに導入しました。
COVIDIEN Force Triadエネルギープラットフォームです。
LigaSure(リガシュア)システムにより直径1~7mmの血管、リンパ管、ハンドピースに挟み込める組織束を融合し、シールします。
つまり、血管の結紮などを糸を使わずに生体が元々持っている血管壁のコラーゲンを融合し安定したシールを作り出すことができます。
シーリングに要する時間は1回につき2秒半くらいで終わります。
またTissueFectセンシングテクノロジーにより、毎秒3333回組織のインピーダンス(電圧と電流比)を検知し出力をコントロールしてくれます。
これにより熱の拡散を抑え、目的とする組織のみに作用し、組織へのくっつきや焦げ付きを防ぎます。
この機材の導入により以下の項目で利点があります。
①身体の中にできる限り糸(異物)を残さない手術が可能となる (縫合糸反応性肉芽腫;糸アレルギーの防止)
②手術時間および麻酔時間の大幅な短縮につながり、動物に対する負担の軽減につながる
③日常的な避妊去勢手術から、様々な腫瘍の摘出などに応用が可能
また今までも電気メスは手術に使用する頻度は髙かったですが、今回のForce Triadに組み込まれているValleylabモードではしっかりとした止血とスムーズな切開を同時に行うことができ、凝固と切開の最適な組み合わせで、低い出力で使用でき、くっつきや熱の広がりを抑え、スムーズに切開が行えるようになりました。
今までの電気メスと違い術者の手元でパワーのコントロールを調節できるようになり、臓器表面からの止まりにくい出血なども「スプレー凝固」という方法で素早く止血することが可能となりました。
先日行われた猫ちゃんの去勢手術の一例をお見せしたいと思います。
睾丸に向かう血管をハンドピースで挟み込んだ状態です。
この状態でシーリングします。
中央の白くなっている部分がシーリングが完了した状態です。
念のために2重にシーリングしていますが、血管からの出血はありません。
血管を糸で結紮するのにかかる時間よりはるかに短い時間でシーリングが終了します。
血管が豊富な腫瘍や臓器などの摘出においては、更に役立つことが期待できます。
いかに短い時間で手術を終わらせて動物の負担を減らすかが課題となり、かつ体内に異物を極力残さない事が動物にとっての将来の大きなメリットとなります。