当院にて新しい機材を導入しました。
直線偏光近赤外線(NIR)治療器(Super Lizer Hyper5000A2J)です。
光の中で最も生体深達性の高い波長帯である600~1600nmの波長を放出します。
光線作用とその輻射熱の両作用によって、組織血流の改善、神経興奮性の抑制、筋弛緩および創傷治癒の促進や疼痛緩和作用などの効果が認められています。
ヒト医療では、炎症性の痛み、外傷(急性期を過ぎたもの)、関節炎およびリウマチ、皮膚疾患、口腔外科領域、突発性難聴、顔面麻痺、肩こり、膝関節症、自律神経疾患など幅広い症状に対して使用されています。
動物においても一般的にヒトと同様に炎症・疼痛管理や創傷治癒の促進に用いられています。
直線偏光近赤外線(NIR) の長所と短所は以下になります。
・長所・・・痛みを伴わない、感染や出血の危険が全くない、特殊な技術を必要としない
・短所・・・治療効果に時間がかかる、治療期間が長期化する場合がある
実際に当院にてNIR治療を行ったワンちゃんとネコちゃんの例をご紹介します。
椎間板ヘルニアの術後管理としてNIR治療を行ったダックスちゃんです。
痛くない治療なので大人しくやらせてくれました。
MRIにて炎症が疑われた脊髄部位に対して左右両側からNIRを照射しているところです。
慢性口内炎のネコちゃんに対して、皮膚の上から口腔内に向かってNIRを照射しているところです。
ステロイド剤を使用しないとすぐに食欲が減退し、よだれが増える子でしたが、レーザー照射を定期的に行う事によりステロイドの投与間隔が延長し、口腔内の炎症も改善傾向に向かっています。
口の中が炎症で痛い子は口を開かれるのを極端に嫌がりますが、口を開かずに皮膚の上からNIRを当てるだけですので、慣れてくれると大人しくやらせてくれる子が多いです。
最近ではインドシアニングリーン(ICG)という試薬のの光特性とNIRの波長を利用し、光線温熱療法(PHT)ならびに、PHTに局所抗がん剤を併用する光線温熱化学療法(PHCT)による表在性腫瘍の治療法や、新たに開発されたICG修飾リポソーム(ICG-lipo)と光を用いて深部腫瘍に対して行う光線免疫誘導治療法なども報告されており、悪性腫瘍に対する外科療法・化学療法・放射線療法以外の新たな選択肢の一つとして注目されています。