子宮蓄膿症とはその名の通り子宮に膿が貯留する病気のことを言います。
犬・猫ともに幅広い年齢層で発症(平均年齢8歳前後)しますが、特に犬においては発情後8週間前後に症状を示すことが多いです。
避妊手術をしていない子で以下の症状を現している時は要注意です。
- 外陰部の腫れ
- 血様~膿様のオリモノを排出 →しきりに陰部を舐めることにより飼い主さんが気付かない場合があります
- 水を飲む量が増え、排尿量も増える
- お腹が膨れる
- 元気消失、食欲不振、発熱、嘔吐、下痢など
診断法としては腹部のX線検査、超音波検査で拡張した子宮を確認し、血液検査&血液凝固系検査を行います。
病態が進行している状態ですと腎不全や敗血症性ショック、播種性血管内凝固症候群(DIC)を誘発し死に至る疾患です。
治療法は外科的手術による卵巣子宮全摘出術が最も有効とされています。
飼い主さんに理解していただきたい事としては、
- 統計的に高齢の雌における死亡原因の上位疾患であること
- 術中および術後にに起こりうる合併症としてエンドトキシンショック、腹膜炎、術後腎不全があること
- 内科療法では一時的に良化しても再発の危険性があること
です。
術後の合併症の管理のために数日間の入院治療が必要となります。
先日行われた子宮蓄膿症を発症したワンちゃんの手術をご紹介します。
12歳のワンちゃんで、「お腹が膨れてきた」との事で来院されました。
X線検査、超音波検査にて子宮の拡大像が確認されたため手術を行いました。
麻酔を導入して寝かせた状態ですが、お腹がはち切れそうな状態です。
お腹を切開して中から出てきた子宮です。
助手が子宮を支えないと落ちてしまうくらいに大きいです。
摘出した卵巣と子宮です。
この子の体重は手術前に22kgあったのですが、摘出した子宮は5.5kgもありました。
もともとポッチャリしたワンちゃんだったので飼い主さんもチョッと太ったかなと勘違いしてしまう事も多いです。
またこの子は発情を抑えるインプラントを他院にて埋め込まれており、同時に摘出しました。
このインプラントを長期間挿入していると子宮蓄膿症や乳腺腫瘍の発生率に影響をおよぼす危険があると言われていますので、現在は殆どの病院で使用されなくなっています。
術後の写真です。
パンパンに張っていたお腹がかなり凹みました。
ワンちゃんも5kg以上の重しをお腹に抱えてきっと苦しかったでしょうね。
術後の合併症が無ければ子宮蓄膿症の生存率は9割以上と言われています。
現在では将来交配をする予定の無い雌の犬猫に対して避妊手術により乳腺腫瘍の発生率を低下させたり、卵巣腫瘍や子宮蓄膿症の予防として推奨しています。